毎日いいなって思えたらいいな

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院長と欽ちゃん走り

私が勤める会社は9階建てのオフィスビルの中にある。


そのビルの屋外階段は常時セキュリティーがかかっていて、1階部分はエントランスホールからは鍵がかかっており階段で上ることは不可能なセキュリティ計画となっている。なので上がる時は必然的に一基しかないエレベーターを使用しなければならない。

そんなセキュリティ計画に猛烈に物申す人がいる。2階テナントの内科クリニックの院長である。

毎朝出勤時間が重なり、慌ただしく出勤してくる院長とエレベーターホールでよく一緒になる。いつも急いで上がるボタンを押す院長。そこでタッチの差で運悪くエレベーターが行ってしまい、さらに運悪く9階まで行ってしまい、挙句の果てに停止しながら下りてくるエレベーター。その間、ベルトを直したりズボンの位置を直したりと苛立ちながらエレベーターを待つ院長の三歩後ろであくびをしながら ぼけーーー と突っ立っている私。特に挨拶をする仲でもなく、でもお互いは知っているという微妙な距離感がこの三歩に現れている。


2階であれば階段でタターーっと上りたい気持ちは分からなくもない。急いでいるので尚更である。がしかし、もっと早く出勤すれば良いのでは??と思ったりもする。というかそうすべきなのだ。解決策はあるのに・・・・やれやれという印象である。


そんな院長と珍しくお昼休みに出くわす。お昼もやっぱり慌てていて中に居た私は閉まりかけていたドアを慌てて開けてやる。


(院長) あ、どもども

(私)  あ、いえいえ


何年も朝一緒にエレベーターを乗ったにも関わらず、ずっと漂っていた3歩の距離感が初めて打ち破られた瞬間だった。

 

院長は二階なので本当に僅かな時間なのだが、その間も首をコキコキ鳴らして『あっ、首が鳴った』とか言ったりしてそわそわしている。相変わらず落ち着きがない。エレベーターが二階に着いて開けるボタンを押してあげた。院長はやっぱり慌てた様子で体はほぼエレベーターから出ているのだが顔だけはこちらに向け


(院長) ありがとう!!!!


と言って欽ちゃん走りで元気に走り去ったのだった。

 

人って、急いで居る時に何かを言い残そうと振りむいたら欽ちゃん走りになるんだなーーーと思わずニヤリとしてしまった。

それにしても欽ちゃん走り、あのコミカルな動き、恐るべき破壊力である。今までのどちらかと言うと鬱陶しいと思っていたオッサンのイメージが崩れ、一気にオモシロおじさんに昇格したのだ。どんよりした空気の時は私も欽ちゃん走りしてみようかしら…場が和むかもしれない。

 

お互いに何となく漂っていた3歩の距離は縮んだような、縮めていいような、ちょっとほんわかした空気感と、今ランチで食べてきたであろう炭火焼肉の臭いが残ったエレベーター。

 


さすが院長、昼からええもん食べてるなーーーー!!!

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