子供は子供どおし
子供の頃初めて何か一人でやり遂げたことを憶えているだろうか。
5歳の娘が『一人でじいじばあばの家に行く』と言い出した。5分間の買い物の間も一人家で留守番するのが嫌でついてくるあの娘がである。
それはひょんなきっかけから始まった。
同じクラスのランちゃんと保育所の帰りが同じになった。ランちゃんのお母さんは日本人離れしたダイナマイトバディーにブルマ並みのショートパンツとパーカーのフードを被ったストリート感漂う出で立ちで、ふくら脛にはがっつりタトゥがあるブラジリアン風な顔立ちのファンキーマザーである。そんなファンキーなマザーなのだから子ももちろんファンキーなガールである。
そんなファンキーなガールのランちゃんが得意げに『家まで走って帰るねーーーん!』
(イエーーイ!ヒューヒューー私ってすごぉおーーーい)
と言った。()内は私の脳内イメージ。
ん??なんか嫌な予感だぞ。。。
と思っていたら案の定、負けず嫌いな娘ヤル気スイッチ オン!
『なっちゃんも走って帰るわ』と言い出す。
そうなるよねー…
め、め、めんどくせぇ・・・・(私)
『なっちゃん、もう真っ暗だし、寒いし、じいじばあばん家行くし、今日は自転車乗って帰ろう』と一刻も早く帰りたい母なだめるもヤル気の炎にメラメラ包まれた娘を鎮静化することはなかなか難しい。そんな母と娘のモタモタしたやりとりをよそ目にファンキーマザーとガールは『さよならーーーー』『ばいばーーーい』と言ってとっとと走って行ってしまった。
完全な置いてけぼりを食らった母娘、娘はこの行き場のなくなったヤル気をどうすればよいのかわからない面持ちでノリノリで走っていくランちゃんを見ながら突っ立っている。
仕方ない…
『なっちゃん、今度のお休みの明るい時間にじいじばあばの家に1人で行ってみたら?』
と新たな提案で気をそらす作戦である。これが思いのほか効果テキメン。
なっちゃんが一人で・・・
なっちゃんが1人で・・・
なっちゃんが一人で・・・
未知なる挑戦 、この新たな提案に再びなっちゃんにやる気の炎がついたのでした。
ボッッ!
自転車の後部座席に飛び乗り
『ばあばの家早く行こう!なっちゃんお腹空いたわ。』
気持ちの切り替え早っ!さっきまでのランちゃんとのやり取りは無かったかのような変わり様である。ずるずる引きずるのは大人だけだ。
ばあばの家までの間ずっと
『なっちゃん今度のお休みに一人でばあばの家行くわな! 』
と言い続ける娘。新たな挑戦に向けてドキドキワクワクが止まらないっといった感じである。
後日無事にミッションをクリアした娘。
その裏では心配してコソコソと後をつけた母親と、心配しすぎて到着予定時刻より随分と前から(まだこない、まだこない)とベランダから身を乗り出し実況中継の電話をしてくるじいじ、玄関前ではばあばが待ち構え、無事に着いたと祝メールを送ってくるおばちゃんなど、多くの大人たちを翻弄しまくっていることを本人は知らない。
そしてこの成長の機会を与えてくれたファンキーガールのランちゃんに感謝したのだった。