記憶力とダイヤモンド
最近のティファニーの看板の前で5歳の娘が必ず言うこと、
これ母ちゃん持ってるやんなーーー!
ソリテールのシンプルなダイヤモンドリングと、メレのデザインのダイヤモンドリングがティファニーカラーの水色をバックに大きく印刷された大型看板である。だけど私が持っているものは正しくはこれでは無い。実際はこれの1/5くらいの大きさのダイヤモンドが一粒キラリと光るソリテールのリングである。結婚するときに主人がなけなしのお金で頑張って買ってきてくれたものだ。サイズはブカブカ、ドラマみたいと笑いながら、とても感動して嬉しくて涙が出たのを憶えている。残念ながら私が持っているものはこれだけで、ダイヤがたくさん散りばめられたメレのリングは持っていない。いつかは買ってくれるかしら?とちらりと旦那様を見たが寒さに震えガクガクブルブルしているのでそれどころではなさそうである。しかし良く憶えている。子供の記憶力には度々驚かされる。見せたことあったかなー?と記憶を辿るが思い当たらない。娘があまりにも大きい声で無邪気に言うもんだから周りの道行く人々が
あの人ティファニーのあれ持ってるんだってー そんな風には見えないわよねー
人は見かけによらないもんだわねー
ほんとにねー
ねー
ねー
とヒソヒソ言ってんじゃないかしら?と自意識過剰で無駄な心配をする母である。人は自分に関わる事以外は興味がないものである。
家帰ったら見せてなー!!
(声がでかいよ、娘さん)
とまだ無邪気におしゃべりを続けている五歳の娘、分かった分かったと早く通り過ぎたい母。子供の"正直"という名の無邪気さが怖い・・・・と苦笑いである。子供の前では言動・行動共に気をつけなければならないなーーーと冬の寒さと娘の驚異的な記憶力にブルッっと震えた。
いつか私の小さなリングはこのしっかり者の娘の物になるのだろうか。あのリングの価値がわかるようになったら
そういえば母ちゃん、あのティファニーの指輪どうしたん??
と言ってきそうだなと遠い将来を想像しニヤリとしてしまう母である。